谷崎潤一郎ではなくイギリスの作家モームの「人間の絆」が原作の映画。原題はOf Human Bondage。

Of Human Bondage (Modern Library)
Of Human Bondage (Modern Library) Gore Vidal
おすすめ平均 star
star「月と六ペンス」以上
starあとがきも面白い。
starモームと絵画
star太陽がいっぱい
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シネフィル・イマジカで淀川長治解説付きをやっていた。 

主人公のフィリップは医大生。先天的な病気のせいで、片足を引きずって歩く。
障害があるフィリップを、レスリー・ハワードは穏やかな紳士的な青年で、不満や葛藤は面に決して出さないで演じている。

フィリップはウェイトレスのミルドレッドにひと目惚れしてしまう。
デートやディナーに誘うと、ミルドレッドは「別にいいけど(I don’t mind.)」って気のない返事をする。
なんかね、この返事の仕方がイマっぽいよね。淑女というよりは、遊び慣れてる感じ。
フィリップは周りに笑われようがとにかく彼女に一直線で、ついにプロポーズをしようと決心する。
貧乏学生が身を切る思いで婚約指輪を買うシーンはけなげだ・・・。
それなのに、生涯の思い出になるはずのディナーで、「私、別の人(金持ちおやじ)と結婚するから♪」と告げられる可哀そうなフィリップ。

しばらくしてミルドレッドは身ごもって金持ちおやじの元を追い出され、フィリップの元に戻ってくる。おやじには正妻がいたことがここで発覚。私には他に妻がいて・・・って、ちょっと面白いカットがあったw

フィリップは未婚の母ミルドレッドを受け入れてやり、ミルドレッドもご飯を作ったり掃除をしたりこれから心を入れ替えて頑張るわ~ってなってるんだけど、当時フィリップには付き合っている女性がいた。フィリップの勉強を支えてくれる健気で聡明なノーラ。ミルドレッドとまるで正反対。
でもミルドレッドが戻ってきたことを知って、白鳥のように後を濁さずノーラは去っていった。

フィリップとミルドレッドは元サヤかと思われたところで、ミルドレッドはフィリップの友人とイイ仲になってしまう。器用な友人においしいところ持ってかれてフィリップかわいそ・・・。

フィリップは患者だったウェールズ人のおじさんに気に入られた。
このおじさん、訛りも見た目もモンティ・パイソンのガンビーそっくりなのでよほど典型的なウェールズ人なんだろうな。
ウェールズおじさんは快気祝いで自宅にフィリップを招待する。
おじさんには似てもにつかないほどのかわいい娘のサリーがいた。恋の予感・・・!

やがてフィリップの友人にフラれ、ボロボロの廃人ストーカーになったミルドレッドがまた戻ってくる。他に頼れる人がいないからフィリップを頼ってくるんだけど、昔のよしみで断らないんだよね。またしばらく一緒に住むことになるけど、誘惑してもノッてこないフィリップにブチキレたミルドレッドはフィリップに暴言を浴びせ、家財を壊し、奨学金の小切手を勝手に燃やして嵐のように出て行く。
恩人にすることじゃないよね。自分がどんな状況にあろうが、ミルドレッドは自分勝手な女なんす。

で、学費の払えないフィリップは医学の道をあきらめ就職することにした。医学校の先生が、記念に足の手術をしていかないかと持ちかけて手術は成功し、フィリップは新しい<人生の>一歩を踏み出した。

五体満足な体を手に入れたフィリップでも、不況のあおりでなかなか就職できなかった。就活中はウェールズ人のおじさん家に厄介になった。水臭い、ワシを頼れ。って言うおじさんは、既に婿をもらった気分だったかもしれない。
そして厄病神、ミルドレッドがまたしても登場。それもひどい状態で。彼女は難しい病気にかかってしまい、子どもも亡くしてしまっていた。医学生の頃の知識でミルドレッドを診察したフィリップは、医者に診せろと言って突き放した。

新しい人生にミルドレッドの場所は無いのか・・・?

その後、なぜかタイミングよく叔父の遺産が転がり込んだので
フィリップは医学の道に復帰できた。
病院にミルドレッドが担ぎ込まれてくる。フィリップが彼女に会う前に、息絶えてしまったと友人から聞く。

ここで、私は次にフィリップは彼女の病室に駆け込み号泣すると予想したのにフィリップは見事に私の期待を裏切り、カルテのミルドレッドの名前を確認するやいなや病院を飛び出しサリーにプロポーズした。なんじゃそりゃ!

つまり、死を確認するまでミルドレッドに縛られていたってことだよね。それはわかるけれど、なんかあまりに変わり身が早すぎて違和感が残った。サリーもお情けでプロポーズしてるんでしょ?とか確認してたし。ですよね~って言っちゃうよ。まったく。
どうしようもない悪女だけど、かつて愛した女性が亡くなっているのにハッピー・エンドのオーラはなんか不適切だと思ってしまった。ここは映画ならではの手法に従っただけで小説はもっと重いのかもしれないけれどね。

笑えるポイントもいくつかあったけれど、この映画を名画としたのはミルドレッド役を演じるベティ・デイヴィスだ。かわいらしいウェイトレスだったのが、男に捨てられ、病気にかかり、心身ともにボロボロになっていく様子が壮絶なのさ。ベティはパッと目を引く美人というよりは、妖艶という単語がぴったりの顔だしね。淀川さんが言うには、ベティはこの映画ので注目を浴びて出世したって。

面白かった。さよなら、さよなら。

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ベティ・デイヴィス/レスリー・ハワード/フランシス・ディー/ケイ・ジョンソン/レジナルド・デニー/アラン・ヘイル/レジナルド・オーウェン/レジナルド・シェフィールド/デスモンド・ロバーツ/ジョン・ピーター・リッチモンド, ジョン・クロムウェル
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